新型カムリ登場。セダンの復権を目指す!

空梅雨となってしまいそうな予感が漂い始めた7月10日、都内お台場にあるMEGA WEBでは新型カムリの記者発表会が行われた。

 前輪駆動のアッパーミディアム・セダンとして、特に北米では圧倒的なベストセラーとして知られるカムリは、これが6年ぶり9度目のフルモデルチェンジ。10代目となったカムリは、トヨタの新たなクルマづくりの指針であるTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用している。これまでにTNGAを採用した例としてはプリウスやC-HRなどが挙げられるが、TNGAに則って総てを一新したのは新型カムリが初めてとなる。走りを予感させるエモーショナルで美しいデザインと、意のままの走りや上質な乗り味、クラストップレベルの低燃費を実現し、市場が小さくなった4ドアセダンの“復権”を目指している。


 搭載されるパワーユニットは、新開発の2.5L直列4気筒エンジンとTHS㈼(トヨタ・ハイブリッド・システム㈼)を組み合わせたもの。高圧縮/ロングストローク化を図るとともに高効率吸気ポート新開発の直噴インジェクターなど最新のメカニズムが盛り込まれたA25A-FXSエンジンは、最大熱効率41%を達成するとともに最高出力も155kW(211PS)と、高効率とパフォーマンスを高い次元で両立。燃費も33.4km/Lを実現している。

(2.5L A25A-FXSエンジン+モーター)

 サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット、リアがダブルウィッシュボーン式。ステアリングにはラック平行式電動パワーステアリングを採用、意のままの走りと上質な乗り味を実現している。ちなみに、フロントのストラットは後傾かつ車両センターに向けて傾けられているが、これはキャスター角などジオメトリーの最適化を目指してトライが続けられたものだが、結果的に、サスペンションストロークを短縮さ
せることなく筒頂部を低く設定することになり、ボンネットを引き下げて流麗なボディラインを生み出す一因ともなった。

 ボディサイズは全長=4885mm×全幅=1840mm×全高=1445mm。先代モデルに比べて全長と全幅が幾分拡大し、全高が25mmも引き下げられ、造り込まれたデザインと相まって、より流麗な印象が強まっている。車両重量は1540〜1600kgでグレードによっては先代とほぼ同じ。大型化されたが実質的に軽量化が配慮されている。大型化によって気になるところだが、レーザースクリューウェルディング(LSW=レーザーを用いて、従来のスポット溶接に比べて溶接間隔を短くする技術)を採用するとともに超高張力鋼板の採用部位を拡大し、大型化にもかかわらずボディ剛性はむしろ強化されている。また細かに見て行くとボディ各所やドアミラー上部にエアロスタビライジングフィンやボルテックスジェネレーターと呼ばれる細かな凹凸を配すことによって空力性能を高めて燃費性能を引き上げるとともに、風切り音などを低減して静粛性を高めるなどの配慮も見逃せない。

 最近は一般ユーザーの意識も高まり、各メーカーでも様々なアイテムが研究されている“安全”への対策だが、新型カムリではミリ波レーダーと単眼カメラを併用した検知センサーを採用し、それらを統合的に制御することで事故の回避と衝突被害の軽減を支援するToyota Safety Sense Pを搭載。プリクラッシュセーフティシステムを構築するとともにレーンディパーチャーアラート(車線逸脱警報)やオートマチックハイビーム
、レーダークルーズコントロールなども装備。車線変更時の後方確認をアシストするブラインドスポットモニターや後退時の死角を検知し、注意を喚起するリヤクロストラックアラート、駐車時や後退時などにおける衝突被害を軽減するリヤクロストラフィックオートブレーキ機能付きインテリジェントクリアランスソナーなども用意されている。

(リヤクロストラフィックアラート〈RCTA〉)

 気になる価格だが、ベーシックグレードのXが3,294,000円で、205/65R16タイヤ+スチールホイールを215/55R17タイヤ+アルミホイールに交換し各所の加飾をアップグレードしたGが3,499,200円。Gに本革シートやカラーヘッドアップディスプレイ、地上デジタルTV+USB/AUX端子付きT-Connect SDナビゲーションシステムなどが装着されたG“レザーパッケージ”が4,195,800円(すべて北海道地区を除いたメーカー希望小売価格)となっている。販売チャネルはこれまでの全国のトヨタカローラ店とネッツ店に加えて、全国のトヨペット店(東京地区は東京トヨタでも販売)となっている。またOEM供給されるダイハツ・アルティスも新型に移行している。


ワンポンイント・コラム
 新型カムリは、初のTNGAフルスペック車ということでトヨタの力の入れようには並々ならぬものが感じられた。大きなセールスポイントのひとつであるデザインに関しては、十人十色で好き嫌いは置いておくが、熱意をもって作り込まれたものであることは間違いない。しかし、新型カムリで最も注目すべきは全国のトヨペット店でも販売することになった点だ。言うまでもなくトヨペット店には基幹(旗艦?)車種のマークXがあり、その棲み分けをどうするのかが、個人的にも気になるところ。初代モデル…2代目セリカ/2代目カリーナの兄弟車種として開発され、カローラ店の専売モデルで、後輪駆動のスポーティな4ドアセダンとしてデビューしたが、2代目に移行する際に前輪駆動に宗旨替え。そして以後はアッパーミドルセダンとしてモデルチェンジを重ねてきた。個人的には納得できないのだが、販売政策の一環だったか、前輪駆動車を後輪駆動車よりも格下に見る傾向があり、となるとカローラ店では旗艦モデルだがトヨペット店では…、となる。さらに、これはトヨタから正式に発表があった訳ではないのだが、同じくハイブリッド4ドアセダンのSAIとLEXUS HSが新型となったカムリに統合されるらしい、とのうわさがあり、さらには販売台数で伸び悩むマークXさえもカムリに統合されるのでは? と業界の内外で喧しい限り。トヨタが言うところの4ドアセダンの復権なるかと同様に、いやそれ以上に今後のトヨタの車種展開が気になるところではある。

ライター:原田 了