自動車博物館探訪記 vol.1 アウディ・フォーラム

ひょんなことから始まった博物館詣で・・・

世界各地の自動車博物館を“巡礼”するようになって久しい。モータージャーナリストという職業柄、いや生来のクルマ好きが高じた結果か、子供のころだけでなく還暦を超えた今でもクルマが大好きなのだが、以前から自動車博物館には興味を抱いていた、というのが正直なところ。ただしそのために海外まで足を延ばそうという発想にはならなかったのだが、知り合いの編集者と話していて(海外の)レースに行くのだったら、是非、周辺の自動車博物館を取材したらいいですよ。うちの雑誌も、レースレポートは必要ないけど、博物館のレポートだったら興味ありますからね、とアイデアをもらったのが切っ掛けになった。そして初めて(記事の企画を考え、取材の意思を持って)訪問した自動車博物館が、ドイツはミュンヘンの近郊、インゴルシュタットにあるアウディ博物館。もう10年近く前になるが、2009年6月のことだった。もっともこの時は、6月というタイミングでもお分かりかと思うが、ル・マン24時間レースの取材と抱き合わせで、メインテーマはレース取材。そのついでに博物館を巡ったのだが、2週間足らずのスケジュールの中にル・マンとホッケンハイムでのF3と2レースを取材しつつアウディを手始めにBMW、メルセデス・ベンツ、ポルシェ、プジョー、VWとメーカー系の企業博物館6つとホッケンハイムとル・マンのサーキット博物館など、都合11もの博物館を駆け足で回る、弾丸ツアーだった。残念ながらハードディスクが壊れてしまい、一部を除いて写真が失われてしまったので、是非とももう一度訪れたいと思い続けているのだが、今回は手元に残った写真でアウディ博物館を紹介することにしよう。

アウディ博物館と呼んできたが、正式名称はアウディ・ミュージアム・モビール(Audi museum mobile)。少し乱暴だがアウディ自動車博物館とでも訳せばいいだろうか。インゴルシュタットにはアウディの基幹工場と本社があって、本社に併設される格好でアウディ・フォーラム・インゴルシュタット(Audi Forum Ingolstadt)が展開されている。今回紹介する博物館はその一角にある。円筒形のビルは基本的には3階建てだがそれぞれ天井の高さが高く、特に1階部分の天井は思いっきり高く設定されており、全体的には4階建てかそれ以上の高さがある。外壁部分の多くが強化ガラスで構成されており、シースルーな円形ビルは存在感が一際だ。内部は外壁に沿って回廊が設けられ、中央部分は3階まで吹き抜けとなっておりシースルーの壁と相まって解放感は群を抜いている。その回廊に、時代別に、そしてテーマ別に多くのクルマが展示されている。いや正確には展示されていた、と言うべきだろうか。こうした博物館では定期的に展示車両を入れ替えるのが一般的で、訪れた時からすでに10年近くが経っていることを考えれば、展示車両は大きく入れ替わっているだろう。それも再度訪れてみたいという想いに繋がっているのだが。もう一つ、これはアウディ博物館に限らないが、博物館を巡る際にはクルマで移動するのが通常で、それも大きな楽しみの一つなのだが、ドイツは高速道路(アウトバーン)が無料で、料金所での支払いを気にすることないのが嬉しい。元来が貧乏性だから有料であることが気に入らないのもあるが、実は料金所での支払いが結構億劫なのだ。国内ではETCカードを使っているから料金所で時間がかかることはないのだが、海外ではこれが結構厄介なのだ。特にイタリアの料金所は厄介だがそれはまた別の機会に。

さてアウディ博物館に話を戻そう。09年の取材であることをお断りして、展示された車両についても触れておこう。おすすめの見学コース…あくまでも09年当時の状況。以下同じ…は、まずエレベーターで3階に上がり、回廊を回って2階に降り、また回廊を回って1階に降りる、というものだが、話の進め方としてグランドフロアに展示されていた戦前のプレステージカーを紹介しておこう。1930年代後半、いわゆるヴィンテージ時代のtyp920カブリオレやリムジーネ、FWDを採用したTyp.UW225のリムジーネ、カブリオレ、そしてロードスターの3兄弟など、時代を超えてプレステージの何たるかを伝えるクルマたちが最も印象に残ったことを記憶している。

 

 

 

 

 

 

一方上階に展示されていたクルマ群の中では、近年はル・マン24時間レースの活躍で知られるアウディだがレースやラリーで活躍した、かつてのワークスカラーに塗られたツーリングカーも印象的だった。もちろん戦前のアウトユニオン時代に造られた、当時としての最新技術を満載、まるで怪物のようなレンシュポルトも充分に魅力的ではあったが。

そして何よりも戦後の復興を支えたDKWブランドの小型車が、とても愛おしく感じられたことも記憶に新しい。今や我が世の春を謳歌するドイツ車だが、かつてはこのように、大衆の生活に密着したクルマづくりが優先されていたことを忘れてはいけないだろうと思った次第。もっとも余計なお世話だが。

 

 

 

 

 

 

 

  • アウディ・ミュージアム・モバイル/Audi museum mobile

・住所:Ettinger Str. 40, 85057 Ingolstadt, Deutschland.

http://www.audi.com/foren/en/audi-forum-ingolstadt/audi-museum-mobile.html

・毎日開館。開館時間は09:00~18:00(土曜・日曜・祭日は10:00~16:00)/入館料は€4.00

・アクセス:フランクフルト国際空港からアウトバーン(A3→A9)でミュンヘン(München)方面に向かう。310㎞先、出口番号61番のインゴルシュタット北(Ingolstadt-Nord)でA9を降り、出口の先を右折し約4㎞先を右折してエッティンガー通り(Ettinger Str.)を北上。約1㎞先右手に博物館。フランクフルト国際空港から約320㎞/3時間余り。ミュンヘン国際空港からは約80㎞/1時間弱。