自動車博物館探訪記 vol.2 BMW博物館

自動車博物館探訪記の第2回目は、ミュンヘンにあるBMW博物館。前回紹介したアウディ・ミュージアム・モビールのあるインゴルシュタットから80km余り。電車でも1時間ちょっと、クルマなら1時間足らずで着いてしまう至近距離。本来ならば1日で2つの博物館を巡る“マチネー”としたかったが、飛行機の長旅で疲れていたこともあり、ミュンヘン郊外の安ホテルに投宿した。ミュンヘンはバイエルン州の州都にしてベルリン、ハンブルクに次ぐドイツ3番目に大きな都市。ちなみに、日本国内からのフライトの多くが到着するフランクフルトはドイツで5番目に大きい都市で、スケールから言うとミュンヘンの約半分。東京や横浜を物差し代わりに見ていては、このスケール感はきっと理解できないだろう。安宿でもベッドで10時間近く爆睡すれば、長旅の疲れも一気に解消。翌日は早朝にホテルをチェックアウト、博物館に繰り出すことになった。話は少し逸れるが、何度となく博物館巡りのツアーを重ねてくると、それなりに“知恵”がついてくる。例えばホテル。安宿で良いから、可能なら連泊が、絶対にお薦め。もちろん、クルマで長距離を走るのが苦でなければ、の条件が付くが、例え100km近くクルマで(余計に)走ったとしても、連泊の方が気が楽だ。まぁクルマで走りまわるのが苦手、なんて向きは端っから、クルマで博物館を巡る旅なんて興味もなく、わざわざ出かけることもないのだろうけど。

で、話は博物館に戻る。前回紹介したアウディ・ミュージアム・モビールがアウディ=VWグループの企業博物館であったように、今回紹介するBMW博物館は、BMWの企業博物館。本社に併設されていて、建物が特徴的な外観をしていることも、これまた同様。さらに言うなら、ハードディスクが壊れてほとんどの写真が失われたことも、それを理由に再度訪れたいと思いながら未だ果たせないでいることまで同様、ってことは関係ないか!?ともかく自動車メーカーが、自社の歴史を大事にしている様はヒシヒシと伝わってくる。国内のメーカーも、近年では自社の製品をメインに歴史を振り返ることに力を注ぐようになってきているが、彼の地ではその力の掛け方が半端ない。さらにドイツでもフランスでもイタリアでも、国立の自動車博物館が整備されており、クルマ好きにとっては羨ましい限り。経済産業省と文部科学省が後援し主管は日本自動車工業会で…、とは見果てぬ夢か。

で、再度話はBMW博物館に。BMWの本社は4本の筒を束ねたようなシルエットで、その名も“Vier Zylinder(ドイツ語で4気筒の意)”。竣工されるやすぐにミュンヘン市内の大きなランドマークになっていた。2008年に、その“Vier Zylinder”の脇に建設されたBMW博物館のビルも、特徴的な外観で、まるでお椀のようなシルエットをしている。このようにビルの外観は特徴的だが、その内部は、らせん状の回廊と幾つかのフロアが設けられ、それぞれのテーマに沿った展示車両が並べられる、博物館としては一般的なフロアプランとなっている。もちろん、展示されているのはBMWの歴代車両。Z3やMのロードスターにM1クーペといった華やかな、言葉を変えれば派手に映るスポーツカーもあればブラバムやザウバーなどと手を携えてF1GPを戦った頃の主戦マシンを始めとするフォーミュラも少なくなかったが、レーシングカーでも2002TIや3.0CSL、あるいはGr.5の320ターボやGr.AのM3などツーリングカーが目立っていた。

さらにロードゴーイングモデルにしてもやはり4ドアセダンが主流となっているのは流石BMW…あくまで個人的な印象です…と言ったところ。ただしそれだけではなく、戦前にオースチン・セブンのライセンス生産車両で製造権を持っていたアイゼナハ自動車車両製作所を買収して4輪車生産に乗り出した、BMWにとっては初の4輪生産車であるBMW-DIXIや、敗戦後にBMW(と旧西ドイツ)の復興をけん引することになったBMW-イセッタの“バブルカー”など、庶民の生活を支えたクルマも忘れることなく展示されてある。

近年、我が世の春を謳歌するドイツ車は、例えBMWでさえも、一般人には手の届かないクルマばかりに現を抜かす風情が感じられない訳ではないものの、その一方で真摯なクルマづくりを続けるとともに、未来に向かっても電動化や知能化を進めているのも間違いない、と勝手に思った次第。ちなみに、この感想は、取材ノートをもとに当時を思い起こしており、個人的かつ感傷的に過ぎるところはご容赦いただきたい。また前回のアウディ・ミュージアム・モビールと同様、今回のBMW博物館も展示スペースや車両は2009年の取材時をもとに紹介しており、現在と展示車両が異なっているかもしれないと追記しておく。

最後に付け加えるなら、BMW博物館とともにBMWファンやクルマ好きにとって見逃せないのは、博物館とは遊歩デッキで結ばれたエリアにあるBMWヴェルト(Welt:ドイツ語で世界。つまりはBMWワールド)と呼ばれるショールーム。と言っても街中のディーラーにあるものとはスケールが違い、Miniやロールス・ロイスも含めたBMWグループのクルマが勢ぞろいで展示されており、こちらだけでも1日、充分楽しめるはずだ。

  • BMW博物館/BMW-Museum
    ・住所:Petuelring 130, 80788 Munchen, Deutschland.
    ・http://www.bmw-welt.com/en/index.html
    ・月曜休館。開館時間は10:00~18:00/入館料は€10.00
    ・アクセス:フランクフルト国際空港からアウトバーン(A3→A9)でミュンヘン(München)方面に向かう。390㎞先、出口番号76番のミュンヘン-シュワービン(München – Schwabing)でA9を降り、出口の先を右折し約4㎞先の右手に博物館。フランクフルト国際空港から400㎞弱/4時間弱。ミュンヘン国際空港からは約40㎞/30分弱。

ライター:原田 了