クルマ好きなら必見の東京モーターショーは11月5日まで開催

10月も月末が近づき、秋も一層深まってきたが、東京ビッグサイトでは2年に1度のビッグイベント、東京モーターショー(TMS)2017が開幕した。「これまでのモビリティの価値を拡張していく」というビジョンのもと「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」をテーマに開催される今回のTMSは、国内の14メーカー/15ブランドに加えて、海外メーカーも数多く出展。東京ビッグサイトは大盛況の様相を呈している。

エネルギーの多様化や環境性能の向上、あるいは安全性の追求など、従来からのテーマに加えて、自動運転や安全サポート、コネクテッドカーといった最近の技術テーマを前面に押し出した展示も多くみられたが、その一方で近未来に発売が期待されるような、夢のあるコンセプトカーも少なくなかった。また、乗用車オンリーではなく2輪車までも含めた総合的なショーであることから、一般的なクルマファンには普段、余り馴染みのない商用車のブースも興味深いものとなっている。特に大型トラックに関しては平成28年度の排気ガス規制の関係から各メーカーが大型トラックの新型をリリース。乗用車メーカー以上に熱気に満ちたブース展開となっていた。

個人的な話になるが、大学までを田舎で過ごしていたから、それまでモーターショーは、自動車雑誌の誌面でしか体験できなかった。だから出版社に就職が決まって上京し、初めて行った時の感激は、今も記憶に鮮明だ。当時はまだ晴海の東京国際見本市会場で行われてきたが、やがてより大きな幕張メッセへと会場が移された。

2009年は、前年に起きたリーマンショックの影響から海外メーカーが出展を取りやめ、出展社数/観客動員ともに前回から半減してしまった。だだっ広い幕張メッセの一部を使用して開催にこぎつけたが、あの時の空疎な感覚は衝撃的で、これもしっかりと記憶に残っている。その後は東京国際展示場(東京ビッグサイト)に移して開催されてきたが、都心でアクセス至便なことも手伝って、従来の人気を取り戻してきた、と報じられている。

主観的なヒストリーはさておき、今回の展示を少し紹介しておこう。まずはモーターショーには欠かせない“夢のクルマ”から。これは近未来のクルマを提案するコンセプトモデルで、例えばこれまでにいくつものタイプが制作され、今回は初のセダンボディ版としてワールドプレミアが実現したSUBARUのVIZIV(ヴィジヴ)や、マツダのVISION(ヴィジョン)COUPEなどデザインの提案をメインとするものから、インテリジェント・モビリティとしての提案に重きが置かれた日産のIMXなど様々。よりリアリティを持たせて近々の発売を予感させるよな、例えばトヨタのCROWN Conceptのようなモデルもあり。クルマ好きにとっては必見の価値がある。

個人的には、トヨタのブースに展示されていたJPN TAXIが最も印象的な1台だった。ちなみにモーターショーの開幕前に発売が開始されているからコンセプトカーではなく市販モデルだが、クラウンやセドリックのタクシー仕様車に代わる新コンセプトのタクシー仕様車。日産のNV200タクシーと同様に全高を少しかさ上げして前後を切り詰めたパッケージが特徴。さらにNV200よりも後発だけにデザインが吟味されていて、いかにもミニバン的なNV200よりもずっと乗用車ライク。タクシーは街の景観となるために塗色も熟考されたようだが、実際には今も街中にあふれているタクシー・カラーになるのでは、と心配になったりもするのだが…。

一方、同じコンセプトモデルでも、トラックに関してはよりリアルなモデルが数多く展示されていた。いすゞのブースでは6×6、つまり3軸すべてを駆動するトラックがスポットを浴びていた。防衛省(自衛隊)への納入実績が豊富な同社では、最低地上高やアプローチ&デパーチャー・アングルを大きくし走破性を高めることで、広域林野火災や豪雨による浸水など大規模災害に対応可能なモデルとしている。また、各社から電動トラックの提案もなされており、新たな排ガス規制もあり、業界揃って力の入るモーターショーだと感じさせられた。

技術展示としてはマツダの次世代ガソリンエンジン『SKYACTIVE-X』が興味深かった。世の趨勢として電動化が重要視されているが、100年以上も前からクルマを支えてきたのは内燃機関。SKYACTIVEのガソリンエンジンやディーゼルエンジンでも注目を浴びたマツダだが、内燃機関の進化改良に直向きな姿勢はもっともっと評価されるべきだと思う。またタイヤメーカー数社から空気充填不要なタイヤが展示されていたのも印象的だった。

海外のモーターショーでは一般的だったが、今回のTMSでは国内の自動車メーカーもヒストリックカー=かつての自社製品を展示していた。ダイハツではコンパーノ・ベルリーナなどが展示されていたが、かわいらしいルックスで、いくつものデザインスタディの中にあって大きな存在感を発揮していた。個人的には今回の展示車両の中で五指に入る好印象なクルマだった。こんな楽しみもあるからモーターショーは見逃せない。ちなみに、今回の東京モーターショー2017は11月5日(日)までの開催となっている。クルマファンには本当にお薦めだ。

トヨタ JPN TAXI
東京モーターショーの開幕直前に市販が開始されたJPN TAXI。タクシーの新たなスタンダードとなるか。レモンイエローに赤帯の“四社カラー”ではなく、できれば、このシックな濃紺のまま普及してほしいものだ。

いすゞ6×6
いすゞのブースでひときわ目立っていたのが6×6。3本の車軸/6本のシングルタイヤをすべて駆動。写真のようにサスペンションも超ロングストロークだから走破性は極めて高そう。災害現場での活躍が期待される。

マツダSKYACTIVE-X
これまでにSKYACTIVEの名のもとにガソリンエンジンとディーゼルエンジンの進化を追求してきたマツダが、双方の“いいとこ取り”を目指して開発した新世代エンジン。

ダンロップ・ジャイロブレイド
空気充填不要のタイヤはいくつかのタイヤメーカーで出展されていた。こちらはダンロップのもので「GYROBLADE(ジャイロブレイド)」と呼ばれている。

ダイハツ・コンパーノ・ベルリーナ
全長3.8m、全幅1.4m強と、現在の軽自動車をわずかに大きくしただけの、コンパクトなボディを持つコンパーノ・ベルリーナ。イタリアはヴィニャーレが手掛けたデザインは、今なお新鮮で魅力的。こんなクルマに出会えるのもモーターショーの楽しみの一つだ。

ライター:原田 了