先週末、ツインリンクでは2017 AUTOBACS SUPER GTシリーズ(S-GT)の第8戦、もてぎGTグランドファイナルが行われ、LEXUSがダブルタイトルでシリーズ連覇を達成。NISSANも最後の最後にワークスのNISMOが、ポールtoウィンでシーズン初優勝を遂げ、有終の美を飾った。地元での最終戦とあって気合の高まっていたHondaも、優勝争いには絡めなかったものの最後までバトルを展開してファンの期待に応え、またシーズン2勝を挙げていたこともあり、こちらもまずまずの大団円となったことは、先日のレースレポートでお伝えしたとおりだ。
そんなS-GT最終戦における、ある意味で最大のトピックとなったのはやはり、アウディとBMW、メルセデス・ベンツの3メイクスが揃ってDTM車両を持ち込み、デモンストレーションランを行ったこと。2006年に来日しNAKAJIMA RACINGからフォーミュラニッポン&SUPER GTにデビュー。言うならば日本に来てトップカテゴリーにステップアップを果たし、やがてアウディのワークスドライバーとして世界耐久選手権(WEC)にも参戦。13年にはル・マン24時間レースの勝者ともなったロイック・デュバルが、DTMで今シーズンを戦ったアウディRS5 DTMをドライブしたことでより一層、レース関係者やファンの耳目を集めることになった、との声も聞かれた。
しかし何よりも見逃せないのは、2019年からと予定されている完全な統一規定の施行に向けて、この日のデモランが着実な一歩になった、ということだ。もちろん、統一規定の施工までには越えなくてはならない高く大きなハードルがいくつも残されている。2ℓ直4直噴ターボの新世代エンジンは、日本では2014年から導入されているもののDTMではまだ開発の途に就いたばかり。S-GTがドライバー2人による“セミ耐久”であるのに対してDTMはドライバーが独りで戦うスプリント、とレースパッケージも異なるし、何よりも日欧の巨大タイヤメーカーが鎬を削っているS-GTに対し、DTMはタイヤワンメイク。だから例えば、タイヤサイズを決定してタイヤメーカーに関しては不問とすれば、統一規定の施行は見えてくるのだが、S-GTを統括するGTA(GTアソシエイション)と、DTMを運営するITR(Internationale Tourenwagen Rennen e.V.)が、ともに目指しているのは統一戦だ。
そのためにはテクニカルレギュレーション(技術規則/車両規定)だけでなくスポーティングレギュレーション(競技規則)も共通化していくことが必要になる。こうなると一方にタイヤのコンペティションがあり、もう一方はコントロールタイヤ(ワンメイクタイヤ)という現状から脱却することが必要になってくるが、最終的なスタイルとしては、S-GTに倣ってDTMもコンペティションタイヤを認めるか、あるいはDTMに倣ってS-GTもワンメイクとするか、の2通りが考えられる。ただしどちらも容易ではない。DTMは韓国のハンコックをコントロールタイヤに採用しているが、コンペティションタイヤを導入した場合、参加に名乗りを挙げるメーカーが出てくるかどうか。またタイヤメーカーと共同してタイヤ開発するスタイルに、チームが馴染めるかどうかも問題だ。一方、S-GTにワンメイクタイヤを導入するのも現実的ではない一面がある。というのも参加チームの中にはタイヤメーカーの“ワークスチーム”として活動しているチームもあるからで、ワンメイクタイヤの導入が、自らの存続に関わるチームも考えられるから、こちらも現実的にはハードルが高く、簡単な話にはならないと思われる。
だが、決して簡単ではない夢の実現に向け、GTAとITCが共同歩調を取り、ドイツと日本でデモンストレーションランを行ったのもまた事実。実は最終戦の終了後、13日(月)に、ARTAのドライバーがサーキット近隣の小学校を訪れる『ARTA学校訪問』というイベントがあって、その取材に出かけたのだが、その中でARTAのドライバーが小学生に対して「夢を実現するためには、決して諦めないこと。諦めずに努力を続けて行けば、夢は必ず叶う!」と説いていた。GTAとITRが、決して諦めることなく努力を続ければ、統一戦という夢も叶うのではないか。いずれにしてもSUPER GTとDTMの統一戦に向け、新たな一歩が踏み出されたのは紛れもない事実だ。
デモランと言えども迫力は充分で、統一戦が楽しみに
マロ・エンゲルがドライブするメルセデスAMG C63クーペに、野尻智紀のARTA NSX-GTとロイック・デュバルのアウディRS5が続いてバトルを“演出”。統一戦に向けて期待が大きく膨らんで行く。
メディアだけでなくメカさんも興味津津
ピットロードに並び、コースインの時を待つDTMの競技車両3台。大きなトピックだけに内外のメディアも熱心にその姿を写真に収めようとしていたが、S-GT参戦チームのメカさんも興味津津の様子でカメラを構えていた。
ライター:原田 了