スーパー耐久レース第5戦 富士SUPER TECの決勝が9月3日(日)、静岡県の富士スピードウェイにて開催された。現在の国内公式レースとして最も長いレースである、今回の10時間耐久レース。スポット参戦は受け付けなかったにも関わらず、59台ものマシンのエントリーがなされた。ここまで賑やかなグリッドは中々珍しい光景であり、当日もファンを沸かせた。
今回の富士戦の見どころは、その時間だけではない。今回の富士戦の行方を最も大きく左右する要因の一つとして、今シリーズ2戦目から各強豪チームを悩ませてきた、ウェイトハンディが挙げられる。今回は累積されてきたウエイトが半減されるが、昨年のレースではこの制度は実施されていなかったため、富士を得意とするチームも、一筋縄ではいかないだろう。
その他、今回のレースで、各チームを悩ませた要因は様々であったが、特に共通して挙げられるのは、“その時間の長さ”と“混走”の二点といえるだろう。 第一は、何といっても“その時間の長さ”である。通常のスーパー耐久レースの約3倍以上の長さ/距離であったために、各マシンへの負担も大きく様々なマシントラブルに直面した。特に、ST-TCRクラスはcivicの2台(#97、#98 Modulo CIVIC TCR)とも、Audi R8が1台(#45 LIQUI MOLY RS3 LMS)トラブルに見舞われ、優勝から遠ざかってしまった。チャンピオン確定がかかっていた#98 は、ポールトゥウィンを果たした#10 Racingline PERFORMANCE GOLF TCRだけでなく、“その長い距離”に、チャンピオン確定を阻止されたともいえる。
第二に、スーパー耐久レースは、通常、各々のクラスのマシンの特徴を考慮し2グループに分けてレースが展開されるが、今回は鈴鹿戦同様、7クラス混走レースとなった点だ。FIA-GT3車両のST-Xクラスと、ST-5クラスでは最高100km/h程度の違いがあるため、各ドライバーは互いに尊重し合った走行が求められる。大半がマナーを遵守しているとはいえ、普段では想定できないことも起こるのがレース。今日は、天候:晴れのち曇り/路面状況:ドライの状況で、比較的過ごしやすい気温の中でレース行われていた。それにも関わらず、序盤から、ST-5クラス車両による多重クラッシュが発生。それを皮切りに、その後も接触や規則違反等、混乱が続く展開となった。
ポールスタートでチャンピオン獲得に王手をかけるST-5 #88は、富士SUPER TECの特別規則にそれを阻止されたとも言える。その特別規則は、SC発動時、すべての車両はピットに入ることはできないというもの。#88は、やむを得ずピットに入らなくてはならず、60秒のペナルティストップが課せられ、優勝を逃した。
対して、スーパー耐久の最大カテゴリーで、昨年のスーパーTECで最も接戦を繰り広げたST-4クラスは、今年もやはり接近戦となった。トップを走行していた#93 SKR ENGINEERING ings S2000と、菅生での第2戦から3連勝を飾っている#86 TOM’S SPIRIT TOM’S SPIRIT 86 との一騎打ちが、レース終了直後まで続いた。しかし、#93 はタイヤの外れるハプニングに見舞われ緊急ピットイン。#86 は半ば運も味方につけ、見事勝利を飾る。これにより、最終戦を待たずして、クラスチャンピオンとなることが決定した。
混乱のレースの中、安定した走りで見事ポールトゥウィンを果たした、ST-X #8 ARN Ferrari 488 GT3 には、観客や他のチームから祝福の拍手が送られた。最後に、10時間完走し、感動を与えてくれた全てのチームに感謝を伝えたい。
次戦は、今シーズンの最終戦となり、10月14日(土)、15日(日)岡山国際サーキットにて行われる。有終の美を飾れるチームはどこか。目が離せない戦いが繰り広げられるだろう。 尚、来年のスーパー耐久レース富士戦は、24時間耐久レースとする計画が発表されている。過去2回、ここ富士スピードウェイでは24時間レースが開催された実績こそあるものの、来年「富士SUPER TEC 24時間レース」の開催が決定すれば、50年ぶりに富士に24時間レースが帰ってくることになる。今から待ち遠しい。