マツダのフラッグシップ、クロスオーバーSUVのCX-8登場

さわやかな秋晴れに見舞われた9月14日、都内は港区赤阪にある東京ミッドタウンにおいてマツダの新型SUV、CX-8の記者発表会が行われた。マツダにおけるネーミング(車名)の法則でクロスオーバーSUVを示すCXとサイズを示す8がからなる車名からも分かるようにCX-8は、マツダの新世代技術『SKYACTIV』を初めて全面採用したミディアムサイズのクロスオーバーSUVのCX-5の兄貴分で、海外専用のクロスオーバーSUV、CX-9の弟分でもある。それはメカニカルな部分でも同様だが、CX-5が2列/5座であるのに対して、CX-8はCX-9と同様3列/6-7座となっており、国内ではクロスオーバーSUVのフラッグシップ的役割も持っている。

それが最も端的に表されているのが偉丈夫な体躯。3サイズ(全長×全幅×全高)は4900×1840×1730mmで、全長・全幅ともに5ナンバーサイズを大きく上回っているのはもちろんだが、トヨタのアルファード/ヴェルファイアや日産のエルグランドといったLLクラスのミニバンにも匹敵している。ただし全高が100mm前後低いことで車重は1780~1900kgとLLクラスのミニバンに比べると100kg以上も軽量に仕上がっている。反対にアッパーミディアムのセダン、例えば7月に発表されたトヨタのカムリと比べるなら全長と全幅はほぼ同じで全高が300mmほど高く、車重も240kgほど重い。軽量化技術が進んだ最近のレベル通り、と言ってよいだろう。

搭載されるエンジンは、マツダが初代のCX-5で国内にトレンドを引き起こしたクリーンディーゼル、2.2ℓ直4ターボ・ディーゼルのSKYACTIV-D 2.2。ただし「急速多段燃焼」や「段付きエッグシェイプピストン」、「超高応答マルチホイールピエゾインジェクター」、「可変ジオメトリーターボチャージャー」などの新技術を盛り込み、2012年に導入以降で最も大きな改良を加えた結果、最高出力が129kW(175馬力)から140kW(190馬力)に、最大トルクは420N・m(42.8kg・m)から450N・m(45.9kg・m)へと向上。同時にJC08モードで17.6km/ℓ(2WD。4WDは17.0km/ℓ)と優れた燃費性能も実現している。ちなみに燃料タンク容量は72ℓ(2WD。4WDは74ℓ)もあって計算上は満タンで1200km近くも走行でき、都内から九州まで無給油で走り切ることが可能だ。

サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット、リアがマルチリンク式。基本設計は、より大型で重量も重くなる海外専用モデルCX-9と共通だが減衰力などをCX-8専用にチューニング。またフロントダンパーにサスペンションの伸び(=リバウンド)を制御する「リバウンドスプリング」を採用、コーナリング時の安定性を向上させている。ブレーキはフロントがベンチレーテッド式、リアがソリッド式の17インチのローター(=ディスク)を採用。大径マスターシリンダーの採用と相まって高い制動力とコントロール性を両立している。

最近のクルマにおいては最優先課題のひとつとなった“安全”への対策だが、CX-8ではマツダのフラッグシップに相応しく、同社が誇る先進安全技術「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」を標準装備。その内容は、全車速追従機能付きのレーダー・クルーズ・コントロールからスマート・ブレーキ・サポート、さらにはレーンキープ・アシストや車線逸脱警報システム、まで多岐にわたっている。またアクティブセーフティ(予防安全)領域では最新の360°ビュー・モニターを設定し死角や障害物との距離を“目視”で確認することが可能となり危険回避操作をサポート。一方、パッシブセーフティ(衝突安全)の領域では軽量・高剛性ボディ「SKYACTIV-BODY」をベースにCピラーには「二又構造」を採用し追突など後面衝突時に3列目乗員を保護する剛性を確保している。また歩行者との衝突を検知した瞬間、ボンネット後端を約100mm持ち上げてエンジンとの間に空間を確保、歩行者への衝撃を緩和する歩行者保護システムのアクティブボンネットも採用している。

気になる価格だが、ベーシックグレードであるXDの2WD(前輪駆動)が3,196,800円で、同AWD(4輪駆動)が3,429,000円。225/65R17タイヤを225/55R19タイヤに交換し豪華装備を加えたXD PROACTIVEの2WDが3,537,000円で、同AWDが3,679,200円。シートヒーターなどを装備したトップグレードのXD L Packageの2WDが3,958,200円で、同AWDが4,190,400円。XDとXD PROACTIVEに用意される7人乗り仕様(XD L Packageは6人乗り仕様のみ)は6人乗り仕様と同額となっている(すべてメーカー希望小売価格)。全国のマツダ販売店を通じて9月14日より予約受注を開始し、発売は12月14日から。

 

◎ワンポイントコラム

一見するとステーションワゴン(SW)にも映るが、背の高さからはSWと一線を画しているCX-8。もちろん近年人気の高いミニバンとも、オフロード性能に特化したSUVとも異なるルックスだ。SUVはもともと、トラックなどから派生したRVで武骨なルックスがアイデンティティだったが、CX-8ではスマートなエクステリアに仕上げられている。それがクロスオーバーSUVたる所以なのだろうが、さらに3列シートを組み込んだ、言わば孤高の存在でもある。だから通常ならばクルマを購入する際にアレしようかコレにしようか悩む、と言うことがイメージし難い。敢えてライバルを挙げるならば、3列シートを装着することからは日産のエクストレイル、ということになるだろうか。サイズ的にはCX-8の方が少し大ぶりだから、居住性などでは優位に立つことになるだろうが、ともにSUVらしからぬルックスが広い支持を集めているようだ。それはともかく、購入に際して最も気をつけなければならないのは、そのボディサイズ。以前、マツダ・アクセラの試乗会で鎌倉の街中を走った時のこと。視界がよくてボディサイズもシッカリと見切れるから、狭い通りでも持て余すことはなかったが、4.8mを超える全長と1840mmの全幅…奇しくもCX-8と同サイズだ!…は、駐車時に気を遣わされた記憶がある。駐車場のサイズはもちろん、そのアクセスもしっかり考える必要がある。余計なお世話かもしれないが…。

ライター:原田 了