S耐 岡山 それぞれのシーズン終幕

秋が一段と色濃くなってきた10月15日、岡山国際サーキットではスーパー耐久レースシリーズ、通称“S耐”の第6戦、スーパー耐久レースin岡山が開催された。当日は終日、降ったり止んだりという生憎の天候となったが全6戦で争われてきたシリーズの最終戦ということで、チャンピオン争いが最後までもつれこんだ3クラスでもチャンピオンが決定。秋雨は王者のうれし涙でもあり、夢を果たせなかった敗者の悔し涙でもあったはずだ。

今シーズンから始まったST-TCRクラスは、最終戦を迎える段階で3チームにタイトル獲得の可能性があったが、土曜日の公式予選で#97「Modulo CIVIC TCR」(伊藤真一/幸内秀憲/中野信治)がポールポジションを獲った段階で、2台のシビック、#97号車と#98「Modulo CIVIC TCR」(黒澤琢弥/石川京侍/加藤寛規)に絞られることになった。そこで土曜の夕方、チームではプレスカンファレンス(?)を実施し、喜びの報告をすることになった。ただ悲喜交々とはこのことで、#97号車はポールポジションを獲ったものの、#98号車はBドライバーの石川が予選アタック中にクラッシュ。幸い石川は無事だったものの、予選後には津山市内の病院で検査を受けており、プレスカンファレンスもパスするありさま。翌日の決勝レースは大事をとって欠場し黒澤と加藤のベテランコンビで戦うことになった。この時点で97号車は79ポイント。優勝すれば21ポイント(優勝:20ポイント+完走:1ポイント)が加わり100ポイントに達するが、95ポイントの98号車が、最下位でも完走したなら9ポイント(5位:8ポイント+完走:1ポイント)を加えて逃げきりでチャンピオンが確定する。そして決勝レースでは、その通り97号車が優勝し、98号車が5位で完走するのだが、チェッカーを受けるまではまさにドラマチック。序盤は3位につけて安定したペースで周回していた98号車だったが、終盤に来てトラブルが発生。ピットで長い時間かけて修復を急ぎ、何とか再スタートを切ってチェッカー。チーム全員が安堵の息を漏らすことになった。「諦めずドライバーの経験でなだめすかせました」と加藤はベテランらしくコメントしていた。

一方、ST-3クラスではレース後のペナルティによってチャンピオンが入れ替わるハプニング。最終戦は#39「ADVICS TRACY RC350」(手塚祐弥/前嶋秀司/鈴木陽)が他を寄せ付けずに圧勝。今季2勝目を飾ったが、ポイントリーダーの#62「DENSO Le Beausset RC350」(嵯峨宏紀/中山雄一/山下健太)が2位でフィニッシュし、タイトル争いでは逃げ切ったかに思われた。だが、レース後に「燃料タンクの最低地上高違反」に対する失格の裁定が下り、#38号車の逆転タイトルが決定。若い手塚を褒めるベテラン前嶋のコメントが印象的だった。

最高峰のST-Xクラスでもハプニングがあった。レース自体は#777「D’station Porsche」(星野敏/荒聖治/近藤翼)の圧勝に終わったが、タイトル争いは予選から波乱含み。ポイントリーダーである#8「ARN Ferrari 488 GT3」(永井宏明/佐々木孝太)が2人とも予選でトップタイムをマークして堂々の6戦連続ポールを奪ったと思われたが、サーキット外で購入したガソリンを使用したことで全タイムを抹消され、最後尾からのスタートとなったのだ。しかし決勝では最後尾から持ち前の速さを見せつけて上位に進出。5位でチェッカーを受けることになったが、この結果に対して抗議が出されることに。大会審査委員会は抗議を却下したが、抗議したチームはこれに控訴。JAFモータースポーツ審査委員会の裁定が下されるまでレース結果は暫定でタイトルも暫定となった。

 

98号車
予選でのクラッシュ、石川の決勝不出走、そして思わぬトラブル。まさにハプニング満載の最終戦となったが、最後は黒澤と加藤のベテランコンビがクルマをなだめてゴールまで運び、TCRの記念すべき初代王者に。

シビックのプレスカンファレンス
97号車がポールを獲ったことで、シビック2台のうちどちらかがチャンピオン、となり後方ではメカニックが総出で98号車の修復作業を急ぐ中、予選後に喜びの会見が行われた。加藤一人、ユニフォームが違うのは、石川の付き添いで病院に行き、サーキットに戻って急遽会見場に呼ばれたため。

39号車の走り
最終戦は文句なしの圧勝。タイトルは逃したものの、若手の成長を喜ぶコメントを出していたベテラン、前嶋のもとにポイントリーダー#62号車の失格と、それにより逆転タイトル獲得の報がもたらされ、喜びは一挙2倍に。

8号車の走り
6戦全戦でポールを奪ったかに見えたが、使用燃料違反で予選の全タイム抹消。ポールもコースレコードも幻と消えた#8号車は、雨の決勝では最後尾からのスタートながら、持ち前の速さで5位まで進出してチェッカー。